アルコ-ル性肝炎は、早晩肝硬変に進展する進行性の肝病変で、肝細胞変性・壊死と、炎症細胞浸潤を特徴とするが、その発生機構は不明であり、この解明は本症の増加が著しいわが国においては重要な研究課題である。本研究は、アルコ-ルの二次代謝産物であるアセトアルデヒドが示す強い細胞生物学的作用に着目し、このアセトアルデヒド作用の解析によるアルコ-ル性肝炎の発生機構の解明を試み、以下の成果を得た。1。アセトアルデヒド・肝細胞膜・共有結合に対する免疫反応の臨床的意義の検討:前年度の研究によって、肝細胞膜がアセトアルデヒドと共有結合すること、この共有結合に対する免疫反応が生じ、アルコ-ル性肝炎では共有結合に対する血中抗体が陽性となることが判明したので、このアルコ-ル肝抗体の臨床的意義を検索した。その結果、血中抗体陽性者(38例)の肝病変を陰性者(53例)のそれと対比すると、抗体陽性者は、血液生化学的検査異常が高度なうえに、肝細胞壊死と炎症細胞浸潤の程度も高度であるという特徴的所見を示すことが明らかとなった。2。共有結合を標的としたリンパ球性細胞障害の検討:共有結合を形成した細胞に対するリンパ球性細胞障害の有無を追及する目的で、共有結合形成リンパ球を標的として、アセトアルデヒド培養リンパ球で刺激を受けて活性化したTリンパによるリンパ球性細胞障害を測定した。その結果、アルコ-ル性肝障害18例中5例にTリンパ球性細胞障害が検出でき、共有結合を標的とした免疫学的細胞細胞障害が生じていることを明らかにした。3。アルコ-ル性肝炎の肝内浸潤リンパ球の解析:アルコ-ル性肝炎における免疫反応の性状を明確にする目的で、リンパ球モノクロ-ナル抗体を用いて浸潤リンパ球を免疫染色した。その結果、肝小葉内には平方mm当り平均123個と有意のCD8リンパ球浸潤が認められることを示した。
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