アルコ-ル性肝炎は、過剰飲酒による肝細胞変性・壊死と炎症細胞浸潤の発生を特徴とするが、このような病態の成立機構は不明である。この点を明らかにする目的で、アセトアルデヒド・蛋白・共有結合に対する免疫反応の解析からアルコ-ル性肝炎の発生機構の解明を試み、以下の成果を得た。1。肝細胞膜との共有結合形成の検討:肝細胞膜との共有結合の有無を解明する目的で、ラット遊離肝細胞をアセトアルデヒド、シアノボロヒドリドと37℃、2時間培養した。その結果、細胞膜との共有結合を示す明瞭なカウント増加が認められた。2。共有結合した肝細胞に対する免疫反応の解析:共有結合に対する抗体産生を知る目的で、アセトアルデヒド潅流後に単離した肝細胞を標的としてプロテインA法で測定した。その結果、アルコ-ル性肝炎の83%に血中抗体を検出し、共有結合に対する免疫反応の存在を明示した。3。共有結合を標的としたリンパ球性細胞障害の検討:共有結合形成細胞の対するリンパ球性細胞障害の有無を知る目的で、共有結合形成リンパ球を標的として、アセトアルデヒド培養リンパ球で活性化したTリンパ球の細胞障害能を測定した。その結果、アルコ-ル性肝障害では共有結合を標的としたTリンパ球性細胞障害が生じていることを明らかにした。4。アルコ-ル肝抗体の臨床的意義の解明:共有結合に対する免疫反応が持つ臨床的意義を解明する目的で、血中抗体陽性者(38例)の肝病変を陰性者(53例)のそれと対比した。その結果、抗体陽性者は、血液生化学的検査異常が強いうえに肝細胞壊死・炎症の程度が高度であることを示した。5。アルコ-ル性肝炎の肝内浸潤リンパ球の解析:アルコ-ル性肝炎における免疫反応の性状を明確にする目的で、リンパ球モノクロ-ナル抗体を使用して浸潤リンパ球を免疫染色した。その結果、肝小葉内には1平方mm当り平均123個と有意のCD8リンパ球浸潤が認められることを示した。
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