これまでの研究によってPolymerase Chain Reaction(PCR)法を用いた血中HBV DNAの検出法が確立され、PCR法は従来の方法と比較して最も HBV DNAの検出感度にすぐれていることが示された。 今年度は、HBs抗原陰性肝疾患例における血中HBV DNAの検出法について検討した。HBs抗原を消失した11例のB型慢性肝炎例では、うち3例にHBV DNAを認めたものの、6例のB型急性肝炎回復例、および9例の非A非B型慢性肝炎例ではHBV DNAは検出されなかった。また、29例のHBs抗原陰性肝細胞癌例では、うち3例にHBV DNAを認め、従来、非B型と診断されていた肝疾患のなかにも、HBVが関与している例の存在していることが示された。さらに、非A非B型肝炎ウィルスの主たる原因ウイルスであるC型肝炎ウイルス(Hepatis C Virus:HCV)の抗体を測定するシステムと、米国カイロン社より報告された情報をもとに作製し、先述のHBs抗原陰性肝細胞癌29例についてHCV抗体を測定した。29例中14例(48%)がHCV抗体陽性を示した。 以上の研究成果からHBVマ-カ-の検索に加えて、PCR法によるHBV DNAおよびHCV抗体の検索により、肝疾患の成因をより明らかにしうると考えられた。
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