<目的>消化性潰瘍におけるガストリン遺伝子の発現機序を解明するため、胃幽門部粘膜組織におけるガストリンmRNAの存在を検討した。<対象>内視鏡検査に至った20〜70歳代の、胃潰瘍5症例、十二指腸潰瘍3症例、対照6症例について胃幽門部粘膜を生検した。採取した組織は二つに分け、一方は速やかにtotal cellular RNAを抽出し、他方は免疫活性測定のため-80℃で保存した。<方法>ガストリンのmRNA検討のためのプロ-ブとして、ヒトガストリンmRNAに相補的な60塩基のDNAを3種をデザインし、phosphoamidite法により合成した。3種のDNAを混合しT_4polynucleotide kinaseにより標識しプロ-ブとした。mRNAの検討のため、組織からのtotal cellular RNAの抽出にはguanidinium/cesiium chloride法を用いた。total cellular RNA 10〜20μgを1.5%agarose gelで電気泳動後、nitrocellulose filterにtransferし、DNAプロ-ブとNorthern blot hybridizationを行った。ガストリン免疫活性は沸騰水法を用い組織よりホルモンを抽出した後、radioimmunoassayにより測定した。<結果>合成DNAプロ-ブのspecific activityは約1.0×10^7cpm/pmolであった。4箇所の生検材料の総湿重量約20mgより約20μgのtotal cellular RNAが抽出された。Northern blot hybridizationにより、量の多寡はあるものの検討したすべての組織でガストリンmRNAと考えられる約0.5kbのバンドが検出され、内視鏡下の生検材料でガストリンmRNAの存在について検討できることが明かとなった。今回の検討ではガストリンmRNA量と免疫活性濃度は、消化性潰瘍患者と対照との間に有意な差は認められなかった。<考察>合成DNAプロ-ブを用いた簡便なmRNA検出法により、内視鏡生検材料のような微量な組織においてガストリンmRNAを検出し得たことから、本法は各種消化器疾患における病態生理を検討するのに有用な方法であると考えられた。
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