研究概要 |
消化性潰瘍の攻撃因子に関与するgastrinの遺伝子発現を検討することは、消化性潰瘍の病態を知るうえで重要な意義がある。消化性潰瘍患者の内視鏡時得られた微量な生検組織においてgastrin mRNAの検出を試みた。 対象と方法:胃潰瘍、十二指腸潰瘍および正常者を対象とし、内視鏡下に生検した幽門部粘膜組織から、CsCl法により全RNAを抽出した。抽出した全RNA10μgとgastrinおよび指標として用いたβーactinに対する合成DNAプロ-ブを用いて、Northern blot analysisを行った。また全RNA1μgをDNase処理後、逆転写酵素を用いてcDNAを作製した。gastrin前駆体のアミノ酸配列のうち、N端側のアミノ酸に対応するsenseおよびantisenseのprimerを合成し、作製したcDNAとPolymerase Chain Reaction(PCR)法を行いgastrin mRNAを増幅した。βーactinについても同様にPCR法を行い、増幅の指標とした。Northern blot analysisにより検出されたgastrin mRNA量とPCR法により検出されたgastrin mRNA量とを比較検討した。 結果:Northern blot analysisによる検討で、内視鏡下生検組織よりgastrin mRNAと考えられる約0,5kbのバンドを、検討した症例の約半数で検出し得た。gastrinとβーactinのmRNAのバンドの濃度比をgastrin mRNA量とした。PCR法を用いると、検討したすべての生検組織において、primerの部位から予想される、増幅された約210bpのgastrin mRNAと、約500bpのβーactin mRNAに相当するバンドが検出された。βーactinのmRNA量で補正したPCR法によるgastrin mRNA量は、Northern blot analysisにより検出されたgastrin mRNA量と良い相関が認められた。PCR法を用い、消化性潰瘍患者の内視鏡下生検組織において、gastrin mRNAの検出法を確立した。
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