研究課題/領域番号 |
01570398
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
原田 英雄 岡山大学, 医学部, 教授 (20033079)
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研究分担者 |
松本 秀次 岡山大学, 医学部, 助手 (60209632)
妹尾 敏伸 岡山大学, 医学部, 助手 (70127562)
越智 浩二 岡山大学, 医学部, 助手 (60160884)
田中 淳太郎 岡山大学, 医学部, 講師 (00116477)
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キーワード | 膵臓 / 慢性膵炎 / 膵液 / プロスタグランディン / アラキドン酸 / 飲酒 / アルコ-ル / 加齢 |
研究概要 |
内視鏡的に採取した純粋膵液中のアラキドン酸が慢性膵炎の病態の進展とともに高値を示し、それが膵実質細胞膜の破壊に由来することが示唆されたので、慢性膵炎の持続・進展におけるプロスタグランディンの役割を明らかにする目的で研究を行い、以下の知見を得た。膵液中および血液中のプロスタグランディンとしてはPGEI_2、PGE_2、TxB_2、PGD_2をラジオインムノアッセイ法を用いて測定した。 (1)膵液中のPGE_2とTxB_2は濃度、排出量ともに慢性膵炎軽度群<中等度群<高度群の順に、正常群にくらべて有意の高値を示した。この傾向はPGE_2で一層著明であった。膵液中のPGI_2およびPGD_2に関しては正常群と慢性膵炎群との間に有意差を認めなかった。血液中のプロスタグランディンに関しても正常群と慢性膵炎群との間に有意さを認めなかった。すなわち、膵局所で産生されたPGE_2とTxB_2は慢性膵炎の持続・進展に重要な役割を演じていることが示唆された。(2)正常対照群でも、飲酒群は非飲酒群にくらべて膵液中PGE_2とTxB_2の有意の高値を示した。無症状でも飲酒者は組織学的に膵障害を示すことが知られており、アルコ-ル性膵障害の初期病変にPGE_2とTxB_2が関与している可能性が示唆された。(3)アルコ-ル性慢性膵炎群のうち禁酒と食事摂生を守った症例は膵液中PGE_2値とTxB_2値の改善を示した。すなわち、膵液中の他のマ-カ-と同様にプロスタグランディンも可逆性であり、禁酒および食事摂生により改善することが判明した。(4)PGI_2については正常群のうちでも65歳以上群は65歳未満群よりも有意の低値を示し、高齢者では膵の血流障害が生じやすいことが示唆された。 以上、膵で産生されるPGE_2およびTxB_2が膵炎の持続・進展に深く関与し、それが禁酒や食事摂生を始めとする治療によって改善することを示唆する成績を得た。今後、実験膵炎を用いて以上の成績を確認する。
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