研究概要 |
1)実験膵炎におけるプロスタグランディンの検討:予備実験により本研究の膵炎モデルとしてはラットのセルレイン誘発膵炎(10ug/kg,1時毎4回投与)が最適であることが判明した。PGE_2(16,16dimethyl PGE_210〜100ug/kg,膵炎誘発の30分前と3時間後各1回投与)は膵の湿重量の増加を有意に抑制し,組織学的には膵の浮腫,空胞形成,炎症細胞浸潤を有意に抑制した。PGE_2の10〜100ug/kgの範囲では,その効果に有意差を認めなかった。血中膵酵素の上昇およびその経時的変動にはPGE_2は影響を及ぼさなかった。すなわち,PGE_2はセルレイン誘発実験膵炎に対して予防的効果,抑制作用を発揮することが判明した。現在TXB_2の作用を検討中であるが,増悪作用を示唆する所見が得られつつある。現在,論文を作成中である。 2)ヒト膵炎の経過と膵液中プロスタグランディンの比較検討:再発性慢性膵炎例の膵管内から内視鏡的に純粋膵液を採取し,膵液中の諸種プロスタグランディン濃度と臨床経過を比較検討した。TXB_2濃度は膵炎の進展および増悪発作とともに上昇を示し,軽快に先立って低下を示した。PGE_2濃度は増悪発作とともにTXB_2と同様に上昇を示すが,軽快後の低下はTXB_2に遅れた。軽快後もPGE_2とPGI_2が高値にとどまる症例は増悪傾向が少なかった。現在,プロスタグランディン合成阻害作用を有する消炎鎮痛剤の投与にともなう臨床効果と膵液中各種プロスタグランディン濃度の変化を比較検討中である。 3)膵液中プロスタグランディンおよびロイコトリエンの新測定法の研究ラジオイムノアッセイ法に代り,高速液体クロマトグラフィ-による測定法を開発すべく検討中であるが,膵液の場合には濃度が低く,また微量の干渉物質が存在するために現在まで成功していない。
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