研究概要 |
膵炎の発症,経過とプロスタグランディンの関連を臨床例と実験膵炎を用いて検討した。I.臨床例における検討:非飲酒対照群33例,慢性膵炎I群33例,同II群12例を対象に,内視観的に純粋膵液を採取し,膵液中のプロスタグテンディンE_2とI_2(PGE_2,PGI_2)およびトロンボキサン(TXB_2)を測定した。(1)TXB_2,PGE_2,PGI_2ともに慢性膵炎I群7II群7対照群の順に高値を示した。(2)膵炎活動期では特にTXB_2の高値が顕著で,TXB_2のみの高値を示す症例があった。(3)軽快安定期にはTXB_2は正常で,なかにはPGE_2のみの高値を示す症例があった。(4)食事療法や薬物療法でTXB_2は低下し,それとともに臨床像の改善を認めた。PGE_2は上昇するか,または低下しても正常上限域にとどまった。(5)非ステロイド性抗炎症鎮痛剤の坐薬を1日2回1週間屯用する程度ではPGE_2の著明な低下は認めなかった。II.動物の実験膵炎における検討:ウイスタ系雄性ラットにセルレイン(CER)膵炎を作製し,6時間後に屠殺して16.16dimethyl PGE_2(dmPGE_2)およびインドメサシン(IND)の投与効果を検討した。(1)dmPGE_2の予防的および治療的皮下投与(CER開始30分前と3時間後)は用量依存性に膵湿重量、腹水量 血清膵酵素を改善し,組織学的にも用量依存性に浮腫,組胞浸潤,空胞形成を改善した。(2)dmPGE_2の治療的投与(CER開始の30分後)は膵湿重量,腹水量,血清膵酵素に影響を及ぼさず,組織学的には軽度の改善効果にとどまった。(3)INDの予防的および治療的皮下投与(CER開始1時間前と3時間後)は膵湿重量と腹水量の増加をきたした。組織学的には膵壊死巣の出現をきたした。以上の成績から次の結論を得た。(1)TXB_2は膵炎に対し増悪的に作用する。(2)PGE_2は保護的に作用するが、早期投与を要する,(3)INDは増悪的に作用するので,臨床的に鎮痛に用いる場合には最小量にとどめる必要がある。
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