C型肝炎ウイルス関連抗体の測定が可能となり、現時点では抗体陽性者はC型肝炎ウイルス(HCV)保有者と考えられている。しかし抗体検出はウイルス感染症の影の部分をみており、本当にウイルスが存在するのか否か知るためにはウイルス遺伝子を直接検出する必要がある。本年度は研究者のみがはじめて得ることに成功したHCV遺伝子の一部のクロ-ン14及びフロ-ン18について慢性肝炎患者血清中にこれに対応する遺伝子が存在するか否か検討した。チンパンジ-におけるHCV感染実験から血清中のウイルス量は10^3〜10^5CIU/mlと考えられ、B型肝炎ウイルスに比較しその量は極微量であると思われる。そのためHCV遺伝子検出にPCR(polymerase chain reaction)法を用いた。患者血清からのRNAの抽出は、既報のHCV遺伝子クロ-ニングを行った際用いた方法により行った。即ち血清1〜2mlを遠心して得た分画にブアニゾン・チオンアネ-ト溶液を加え、ホモジネ-ト後イソプロピ-ルアルコ-ルで沈殿させ、さらにエタノ-ルで再沈殿させた。これを少量のDWに溶解し、逆転写酵素を用いてRNAよりcDNA合成を行った。PCRに用いるセンス、アンチセンスプライマ-は前回クロ-ニングしたクロ-ン14、クロ-ン18の遺伝し配列をもとにしてDNA合成機により合成した。増幅産物はアガロ-スゲルで電気泳動後エチジウムブロマイドにより確認した。上記の方法で各種肝疾患においてHCVーRNAの検出を行ったところ、多数のクロ-ン14抗体陽性のC型肝炎患者に予想される長さのバンドが確認できた。またクロ-ン14抗体陰性例の中にもバンドが確認できるものも存在した。今回行ったPCR法を用いたHCVRNAの検出によりキャリア-と考えられるクロ-ン14抗体陽性例のみならず、抗体陰性例にもウイルスRNAが存在する可能性が示されHCVウイルスの存在診断には遺伝子レベルでの解析を要すると考えられた。
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