われわれは非A非B型肝炎患者血漿から遺伝子工学的手法を駆使して、患者血清を抗体として用いたイムノスクリ-ニング法により12個の非A非B型肝炎に特異的なCDNAクロ-ンの分離に成功した。これらのクロ-ンのうちクロ-ンNo.14は114塩基、38アミノ酸からなり、きわめてC型肝炎ウイルス(HCV)感染に特異的にかつ高感度に検出される。最近、HCVの構造蛋白領域の遺伝子構造が明らかにされ、クロ-ン14の配列はHCVのコア蛋白コ-ド領域と相同性を有し、その発現産物に対する血中抗体(有馬14抗体)は一種のHCVコア抗体であることが明らかにされた。 本年度はクロ-ン14によりコ-ドされるアミノ酸配列を人工合成あるいは大腸菌に発現された組換え蛋白を抗原に用いた有馬14抗体の酵素抗体法(ELISA)による測定系を確立し、C型肝炎の抗体診断における有用性を検討した。また、ポリメラ-ゼ・チエイン・リアクション(DCR)を用いたHCV遺伝子の検出も行ないHCV抗体の測定結果と比較検討した。合成ペプチドを抗原に用いたELISAによる有馬14抗体の測定では非A非B型肝疾患に特異的に検出され、すでにC型肝炎の抗体診断に用いられているCー100抗体とは一部解離した結果がえられた。特に、献血者および血友病患者ではHCVのコア蛋白を認識する有馬14抗体の方が、非構造蛋白領域を認識するCー100抗体より明らかに検出率が高かった。さらに、Cー100抗体陰性で有馬14抗体のみ陽性の症例において、60%以上の高率にPCR法でHCV RNAが検出され、有馬14抗体のC型肝炎の血清診断における有用性が確認された。現在、HCVの構造蛋白コ-ド領域を含むHCV関連CDNAクロ-ンを新たに多数得ており、それらのクロ-ンの有用性を検討中である。
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