1.昨年の研究に引き続いてさらに例数を重ね、αーフェトプロテイン(AFP)陽性の慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌例についてレンズマメレクチンA(LCAーA)およびインゲンマメレクチン(EーPHA)を用いた親和電気泳動によってAFPの分画定量を行った。この結果、血清AFPレベルが>1.000ng/mlの肝細胞癌の44例全例において、AFPーL13>15%あるいはAFPーP4>12%のいずれかが陽性であり、1.000ng/ml≦AFP>200ng/mlの20例では85%が、AFP≦200ng/mlの16例では88%が陽性であった。AFP低値例での陽性率の低下は担癌硬変肝が産生するAFPによる腫瘍産生AFPの稀釈が要因として考えられた。 2.慢性肝炎、肝硬変の経過観察例もさらに追加し、AFPーL3およびAFPーP4の両者が陰性であった慢性肝炎23例、肝硬変28例、計51例のうち、2年以内に4例(8%)に肝細胞癌の発生を画像的に見たのに対し、AFPーL3あるいはAFPーP4のいずれかが陽性の5例の肝硬変では、1年10ケ月以内に全例に肝細胞癌の発生をみた。 3.一方、画像的に肝細胞癌が疑われながら確診に至らない時点でAFPーL3およびAFPーP4が陽性の肝硬変2例は、いずれも数ケ月以内に肝細胞癌と診断された。 4.以上より、AFPーL3およびAFPーP4の陽性化は肝細胞癌の前臨床診断的意義を有し、肝細胞癌の超高危険群設定にも有用なことが明らかとなった。
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