B型慢性活動性肝炎の免疫病理と治療に関する研究

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01570402
• 研究機関: 香川医科大学
• 研究代表者: 西岡 幹雄 香川医科大学, 医学部, 教授 (30034937)
• 研究分担者: 白井 睦訓 香川医科大学, 医学部附属病院, 助手 (20196596) ; 渡辺 精四郎 香川医科大学, 医学部附属病院, 講師 (00158635)
• キーワード: B型肝炎 / 慢性活動性肝炎 / インタ-フェロン / インタ-ロイキンz / HBC抗原 / Pre Sz抗原 / リンパ球 / T細胞

研究概要

B型慢性活動性肝炎(CAHーB)の免疫病理に関しては、今回、HBC抗原に特異的に反応する末梢血リンパ球がT細胞、さらにCD4陽性T細胞であることをT細胞の各種モノクロナ-ル抗体を用いて明らかにした。これは、末梢血中にはHBC抗原と特異的に反応するヘルパ-T細胞の存在を示唆する。このHBC特異的ヘルパ-T細胞反応は、同患者のCD8陽性T細胞によって抑制される、つまりHBC抗原特異的なザプレッサ-T細胞が存在することが明らかとなった。最近、recombrinant pre Sz抗原に特異的なリンパ球反応についても解析を始めた。HBC抗原に対する反応ほど強くはないが、やはりCAHーB患者のシュ-ブ期には、preーSz抗原特異反応性リンパ球が存在し、同患者における肝細胞破壊にかかわり合いをもつことがうかがえた。
CAHーB患者の治療に関しては今までのInterleekinーz療法を長期間にわたってつづけ、名糖Interferon(IFN)療法の効果と比較検討を行なっている。さらに、新しい試みとしてガンマ-IFNをCAHーB患者に1〜2週間投与し、患者の免疫能を高め、その後、IFN、αまたβを週3回、長期投与する方法を検討している。
CAHーBにおけるIFNの作用機序についても免疫学的アプロ-チを行っている。IFN投与前ならびに後において、末梢血リンパ球のHBC抗原反応性について解析している。症例数は少ないが、HBC抗体が出現するようなCAHーBのIFN有効症例では、HBC抗原に対するCD4陽性T細胞の反応能がIFN投与1週目ですでに高くなっている。このような研究はIFNの作用機序の解明のみならずIFN療法の有効症例の選択にも貴重な資料を提供するものと思われる。

研究成果

• [文献書誌] 西岡幹夫 他: "B型慢性活動性肝炎の免疫病理と治療に関する研究" 病態生理. 8. 273-275 (1989)
• [文献書誌] 高瀬泰造 他: "B型慢性肝炎に対するIFNの治療成績" 岡山医学会雑誌. 101. 257-259 (1989)
• [文献書誌] 西岡幹夫: "B型肝炎ウイルスとキラ-細胞" 医学のあゆみ. 151. 840-845 (1989)
• [文献書誌] 長島秀夫 他: "組換え沈降B型肝炎ウイルス(酵母由来、BRーHB)第I相、第II相試験成績" 基礎と臨床. 23. 867-876 (1989)
• [文献書誌] S.Terada: "Dynamics of HB core particles during recombinant interleulin 2 therapy of chronc active type B hepatitis." J.clin,Electron Microscopy. 21. 5-6 (1988)
• [文献書誌] 西岡幹夫 他: "インタ-ロイキンzによる慢性肝炎の治療" 治療学. 24. 69-74 (1990)
• [文献書誌] 西岡幹夫: "B型慢性肝炎の手引き" 蟹書房, 31 (1989)
• [文献書誌] 伊藤憲一,西岡幹夫,辻孝夫: "肝臓病を理解するための免疫学" 日本医学館, 224 (1989)