研究分担者 |
小坂 和宏 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手
土屋 匠 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (80207406)
村上 誠 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手
原田 重人 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (20219893)
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研究概要 |
肝硬変患者にとって食道静脈癌破裂および胃腸管出血では、予後を左右する大きな因子である。従来食道離断術、脾摘、硬化療法などの外科的治療が主流で、薬物による内科的予防処置はあまり顧みられなかった。最近になり、β遮断剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤(CEI)などによる門脈内圧の低下、そしてこれによる出血への予防が多く研究・報告され、内科的薬物療法を再認識する必要性があるとの声が高まっている。この意味で、門脈血管という特殊性を、種々の受容体レベルから再認識する必要があり、また、プロダスグランディン(特にTXA_2とPGI_2のバランス)、レニン、アンギオテイシン、アデノシン、カテコ-ルアミン系などの内因性調節物質の調節不全の検討が必要となってきている。今回我々は、まず手始めに、CEIである。Enalaprilを肝硬変患者に10mg/日8日間使用し、有意なNa利尿効果(10〜15%の増加)と腎機能の改善(14.3%のCrClの改善増加)を観察し、同時にその機序として尿中プロスタノイド(PGE_2,TXB_2,lldehydroTXB_2,6KetoPGF_<1α>)の増加を認め、一連の結果をHepatologyに報告しつつある。また動物実験として、肝硬変(LC)ラット、門脈圧亢進症(PH)ラットを作成した。LCラットはオリ-ブ油混入の四塩化炭素0.8mg/kgを週2〜3回3ヶ月間、フェノバルビタ-ル処理PHラットは開腹して門脈に20G針、3-0絹糸で狭窄し、開腹後2週間後のラットを使用し、それらラットと対照ラットの門脈、末梢肝組織内のプロスタノイド値PG(6KetoPGF_<1α>,TXB_2を測定し比較検討したところ、LCラットでは高いPGが肝組織内で得られ、LC,PHラットともに対照ラットに比較して門脈・肝組織内のPGが有意に高値を示した。この結果は、PGがLC,PHの過程に大きく関わっていることを示唆するものであった。
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