サルコイド-シスは原因不明の全身性肉芽腫性疾患であるが、その発症には何らかの免疫異常や遺伝因子の関与が推定されている。我々は以前にはサルコイド-シスとHLAーDRW52抗原との相関を報告しているが、このたびは同病患者のHLA遺伝子とT cell receptor遺伝子をRFLP法を用いて解析し、健常人との比較検討を行った。サルコイド-シス患者及び健常人対照の末梢血リンパ球よりDNAを抽出し、HLAーDRB、DQα、DQβ遺伝子、及びT cell receptorのα鎖、β鎖遺伝子のcDNAをプロ-ブとして用いた。 HLAーDR遺伝子については、従来の血清学的なタイピングでは同定できなかった多型が識別された。サルコイド-シス患者に特異的なDNAフラグメントは認められなかったものの、5種類のDRβフラグメントは陽性者の頻度が患者群で有意に高く、DRw52陽性者に特異的に認められた。またそれらのフラグメントがどの患者で見られるかといったパタ-ンは互いによく一致し、患者をフラグメントの有無によって2群に分けることが可能であった。一方、HLAーDQα、DQβ遺伝子のRFLPにおいても血清学的特異性を上回る多型が確認されたが、サルコイドーシスとの明かな相関はなく、同病発症におけるHLAの役割の主体はDR抗原によっていると推定された。 T cell receptor遺伝子については、サルコイド-シス患者に特異的なV領域のrearrengementは認められず、またRFLPで得られるフラグメントの頻度についても患者と健常者間で有急の差はなかった。この結果より、サルコイド-シス発症に関わる抗原はheterogenousである可能性が示唆された。
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