研究概要 |
実験動物(主にネコ)の気管より摘出した単離粘膜下腺(=気管子腺)を用いて検索し次の結果を得た。(1)粘膜下腺の腺収縮は数分以内の気道分泌反応を形成しているが,この腺収縮には筋上皮細胞内外のCaイオンが関与している。(2)粘膜下腺の分泌細胞内のCaイオン濃度を螢光色素Fura2を用いて測定し更に細胞内cAMP濃度を求めた。これらと粘膜下腺からのラジオラベルされた粘液糖蛋白質(ムチン)の分泌反応を対比させた。ムスカリニンM_3受容体,αーアドレナリン受容体,タキキニン受容体(サブスタンスP,ニュ-ロキニンA,Bなどによる)へ刺激は細胞内Caイオン濃度の上昇を併いムチン分泌を生じせしめる。その際、細胞外からのCaイオン流入が、細胞内貯臓部位からの遊離に比べて,より重要である。すなわち,これらの刺激によるムチン分泌にはイノシト-ルリン酸ーCaイオン系がセカンドメッセンジャ-として働いていることが判明した。一方,βーアドレナリン受容体及びVIP受容体の刺激は細胞内cAMPの上昇を併ってムチン分泌をもたらし,cAMPが細胞内セカンドメッセンジャ-として働いていることが考えられた。(3)分泌細胞膜のNa^+/K^+ポンプ活性を粘膜下腺からの電解質及び水分分泌の指票として検索した。ムスカリンM_3受容体及びαアドレナリン受容体の刺激が細胞内Caイオン系をセカンドメッセンジャ-として電解質すなわち水分分泌をもたらすことが判明した。(4)エンドセリンによる刺激は、単離粘膜下腺では細胞内Caイオン系をセカンドメッセンジャ-としてムチン分泌亢進をもたらす。一方,気道上皮存在下では逆にエンドセリンによる刺激は粘膜下腺からの分泌を抑制し,気道上皮細胞からへの分泌抑制因子の放出を刺激すると考えられた。(5)ムスカリン受容体の刺激が粘膜下腺の導管部細胞のCaイオン濃度の上昇をもたらし、その電解質吸収能を発揮することが推定された。
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