本年度は先ずフィブロネクチンでcoatingした厚さ20μmのシリコンゴム上に人胎児肺線維芽細胞(HELF)をconfluentに生着させることを第一の目標とした。100μg牛フィブロネクチン/ml phosphateーbuffered saline(pH7.4)で4℃overnight incubateされた培養dishを用いる事でこの目標は達成された。次に最終目標である細胞シ-トの応力ー歪曲線に及ぼすHELFの影響の測定を行った(Fibronectinーcoatedシリコン膜上にHELFが生着した系を細胞シ-トと呼ぶ)。細胞シ-トをド-ム状にinflateーdeflateして歪を与えド-ム内の圧(応力)とド-ムの容積変化(歪)を記録しXーY座標にプロットし圧ー量曲線とした。細胞シ-トの圧ー量曲線に及ぼすHELFの影響を測定する前に以下の実験を施行した。1.シリコン膜のみの圧ー量曲線の測定。2.シリコン膜上にフィブロネクチンがcoatingされた系(Fibronectinーcoated シリコン膜)の圧ー量曲線の評価。3.Fibronectinーcoatedシリコン膜に及ぼすトリプシンの影響の観察。その結果、シリコン膜のみの圧量曲線はヒステレシスを呈せず本実験で与えられた歪の範囲内では歪の程度を種々に変えても同一の軌跡上を伸縮した。しかしfibronectinーcoatedシリコン膜のー圧量曲線はヒステレシスル-プを示した。このヒステレシスル-プは0.3%トリプシン+2.5mM EDTAによる処理によっても変化を受けなかった。細胞シ-トも又ヒステレシスを呈した。細胞シ-トのヒステレシスル-プはトリプシン・EDTA処理によって縮小する傾向が観察された。今後は品質の均一な培養dishを作成し検討を重ねる必要がある。
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