平成元年度の研究では、以下の実績が得られた。 1.中脳レベルで除脳した、自発呼吸下のネコで、椎骨動脈カテ-テルからN_2飽和生理食塩水を微量注入して、一過性の低酸素負荷を与えると直ちに呼吸抑制が誘発された。一方、CO_2で飽和した生食を同量注入すると、逆に呼吸は明確な興奮反応(中枢化学受容器刺激効果)を示した。これらの結果は、橋・延髄に低酸素で呼吸を抑制する構造があることを示すものと解釈されるが、本デ-タはJ.Autonomic Nervous Systemに発表された。 2.上記の負荷で反応するニュ-ロンを延髄腹側の網様体を中心に探索した結果、N_2注入負荷(低酸素負荷のみ)には、興奮性反応をするが、CO_2注入負荷には反応しないものが見出され、中枢性の低酸素のみに応答するニュ-ロンが存在することが確かめられた。この結果は、日本生理学会に発表した。 3.多連微小ガラス電極を用いて、呼吸性ニュ-ロンを細胞外記録しつつ、その近傍にセロトニン、ノルアドレナリンをピコ・ポンプを用いて微量圧注入する実験にて、興味深い新知見が得られた。呼気性ニュ-ロンにはセロトニンで興奮するものと、抑制するものがあり、その違いは呼気性ニュ-ロンの発射パタ-ンに基づき、漸減型は興奮で、漸増型は抑制であった。この結果は日本神経科学集会に発表した。漸減型発射の呼気性ニュ-ロンは迷走神経(反回神経)を介して上気道開大筋(内喉頭筋の後筋)を支配している可能性が示唆されたので、現在、逆行性刺激法と組織学的検索法を利用してこの点を検討中である。
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