真菌菌体成分であるbetal-3グルカン(βG)、およびグラム陰性菌の菌体成分エンドトキシン(LPS)の二者につき呼吸器に対する生物活性をモルモット吸入系を用い検討した。 1.Collison atomizerにより形成されたE.coli 026:B6 LPSエアロゾルを吸入させた場合、肺胞洗浄液(BALF)細胞各成分は、漸次増加傾向を示し、24時間後に最高値に達した。増加は、好中球において最も著明であり、マクロファ-ジ(AM)、好酸球がこれに続いた。βGについては、同様の実験で好中球を中心としてLPSの場合と類似した細胞各成分の増加が示された。このようにβGにおいてもLPSと同様の細胞成分変化が惹起されることが明らかとなった。 2.βGにより惹起されるこのようなBALF細胞成分変化の成立機序を解明する目的で、AMのグルカン結合因子(βGリセプタ-)について検討した。可溶性グルカンでAMを処理し、グルカンリセプタ-をブロックした場合、次に加えられた粒子状グルカンのphagocytosisは、明らかな抑制を受けた。したがってβGについては、AM表面のグルカンリセプタ-を介し、その作用が発現している可能性が示された。 3.次に実際にsick building syndrome(SSS)として呼吸器症状の多発する地区を対象としてair sampling filter中のβG量測定を行なった。βG量は、SSSの出現とdose dependentに対応する傾向が得られ、したがってSSSの原因因子の一つとしてβGが作用している可能性が考えられた。
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