気道過敏性は気管支喘息の最も特徴的な病態生理学的異常であり、その機序の解明は気管支喘息発症の解明につながり、根治的治療の確立に役立つと考えられる。近年、軸索反射の気管支喘息への関与が注目されているが、気道に軸索反射が存在する確かな証明は未だなされていない。そこで我々は、モルモットを用いたin vitroの実験において、迷走神経末梢に於けるヒスタミン・ブラディキニンの作用機序を検討し、気道における軸索反射の証明を試み、以下の成績が得られた. (1)アトロピンは気管平滑筋のヒスタミンに対する反応性を有意に抑制した。(2)アトロピンは気管平滑筋のブラディキニンに対する反応性には効果を示さなかった。(3)テトロドキシンは気管平滑筋のヒスタミンに対する反応性を変化させなかった。(4)テトロドキシンは気管平滑筋のブラディキニンに対する反応性を有意に抑制した。(5)カプサイシン投与モルモットでは、テトロドキシンによるブラディキニン収縮の抑制がみられなかった。 これらの結果は、迷走神経は気道局所においてヒスタミン・ブラディキニンによる収縮に対し増強作用を有していることを示している。この機序として、ヒスタミンによる収縮は迷走神経末端から遊離されるアセチルコリンが関与し、ブラディキニンによる収縮には軸索反射の結果cーfiber末端から遊離されるtachykininが関与している可能性が強く示唆された.
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