夏型過敏性肺臓炎の発症機構を免疫学的に解析する目的で、まず、患者にトリコスポロン・クタネウムの培養濾液抗原を用いて吸入誘発試験を行った。その結果、吸入誘発試験は患者が自分の居住環境で感作されたトリコスポロン・クタネウムの菌血清型と同一の菌血清型抗原を吸入したときにのみ特異的に起こることがわかった。そこで次に、本真菌の菌血清型を規定している抗原物質をカラムクロマトグラフィ-を用いて部分精製することを試みた。その結果、分子量100万前後の多糖体を主成分とするA画分と分子量数十万から数万の多糖体を主成分とするB画分を得たが、菌血清型を規定する物質はA画分に認められた。AおよびB画分を用いて家兎に実験的過敏性肺臓炎を作成したところ、A画分ではヒトの夏型過敏性肺臓炎に類似した体芽腫性胞隔炎が形成されたが、B画分では肉芽腫の形成は弱かった。なお、A画分の抗原性は蛋白分解酵素では失活しなかったが、過よう素酸処理では失活したことから、抗原決定基は多糖体であると考えられた。次に、A画分をB/Cマウスに免疫して脾細胞を得た。この脾細胞をPAー1ミエロ-マ細胞と細胞融合を行い、この細胞から数種類のモノクロ-ナル抗体を得た。SerotypeIに特異的に反応するモノクロ-ナル抗体はIgG1に属し、SerotypeIIに特異的に反応するものはIgG2aに属し、両Serotypeに共通して反応するものはIgMに属していた。現在、これらのモノクロ-ナル抗体を活性型人体であるLargeA LargeFーTresylーTOYOPEARL 650Mに結合させたカラムを作成し、このカラムに菌血清関連高分子多糖体をアプライして発症抗原を精製中である。今後、このようにして得られた精製抗原を用いてヒトならびに実験モデルを用いて本症における免疫学的発症機構を検討する予定である。
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