研究課題/領域番号 |
01570448
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
上野 聡 大阪大学, 医学部, 助手 (40184949)
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研究分担者 |
宮井 一郎 大阪大学, 医学部附属病院, 医員
西川 嘉郎 大阪大学, 医学部, 助手 (10218141)
依藤 史郎 大阪大学, 医学部附属病院, 助教授 (80191675)
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キーワード | ニコチン性アセチルコリン受容体 / マイネルト核 / 大脳皮質 / mRNA / アルツハイマ-病 / 痴呆 |
研究概要 |
〔目的〕高次脳機能は円滑な神経細胞間のシナプス伝達によって成立し、脳機能障害を招く一因としてシナプスの神経伝達物質受容体の減少に起因する伝達高率低下があげられる。事実、アルツハイマ-型痴呆では大脳皮質ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)数が減少している。本研究ではnAChR発現調節機構を解明する第一歩としてnucleus basalis magnocellularis(nbm)破壊により大脳皮質への入力を断ち学習障害に陥ったラットのコリン作動性神経機能の変化を受容体発現という観点から解析した。〔方法〕ラット左nbmを脳定位手術にてイボテン酸を注入破壊後、1週と4週に断頭し前頭頭頂葉皮質を切除。同部の1.コリンアセチルトランスフェラ-ゼ(chAT)活性を^<14>CーアセチルCoAを基質とし2.nAChR含量を^3HーLーニコチンをリガンドとし3.nAChRサブユニット(α3,α4,β2)mRNA発現量を各cDNAの相同性の低い3'側約500bpをプロ-ブとして、ノザンブロット法およびドットブロット法で解析した。〔結果及び考案〕1.破壊側ChAT活性はnbmからのコリン性脱神経支配により非破壊側の65%に低下した。2.Scatchard分析では大脳皮質は単一の高親和性ニコチン結合部位を有した。nbm破壊によるKd、Bmaxの変動はなかった。3.各nAChRmRNA発現量はノザンブロットで各プロ-ブで交叉反応がないことを確認後、ドットブロットで測定した。nbm破壊1週後、破壊側皮質のα4とβ2mRNAの発現量は非破壊側のそれぞれ1.8、1.2倍に増加したが、4週後には非破壊側と同レベルであった。この増加はβアクチンmRNA発現に変動がないことから特異的なものであり、脱神経後早期の除神経性過敏が存在を示唆する。α3mRNA発現はnbm破壊に影響されなかった。以上より本研究はリガンド結合法では検出できなかったnbm破壊の皮質nAChR発現に対する影響を遺伝子発現レベルで明らかにし、nbmから前頭葉皮質へのニコチン性コリン作動性神経投射を脳nAChR mRNAの変化をもって証明した。
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