前年度、正常人の眼球運動に伴う脳皮質電位を検討し、1)眼球運動開始前の緩徐な陰性電位は随意性の高いタスクで出現し易く運動準備電位と考えられる、2)ラムダ反応は、視覚誘発電位と考えられる、3)陽性スパイク電位は眼球運動そのものに関連した電位であると推定されるなどの結論を得た。本年度は種々の神経疾患患者の眼球運動に伴う脳皮質電位のうち、眼球運動に先行する緩徐な陰性電位について検討した。 方法は脳波と眼電図の多チャンネル同時記録を行い、眼電図をトリガ-として脳波を加算平均し、saccadeに伴う脳皮質電位を得た。脳波記録は国際10ー20法に準じ、眼球運動は振幅10゚のsaccadeをランダムに4ー5秒に1回反復し、visually triggered saccade(VTS)、voluntary saccade(VS)の2種類のタスクについて各々の脳波の加算平均を行った。分析時間はトリガ-前2.8秒、後1.2秒の計4秒で、少なくとも60回以上を加算平均した。対象はパ-キンソン病(PD)7名、脊髄小脳変性症(SCD)6名、共同偏視を示した1側脳血管障害(CVD)9名であった。その結果、眼球運動開始前の緩徐な陰性電位の出現は、1)VSTでは正常者で10%、PDで0%、SCDで14%、CVDで44%であった、2)VSでは正常者で83%、PDで43%、SCDで50%、CVDで67%であった、3)CVDでは障害脳へ向かうsaccadeで56%、正常脳へ向かうsaccadeで22%であった。 以上より眼球運動開始前の緩徐な陰性電位は、1)神経疾患患者では正常者に比し随意性saccadeで出現しにくかった。2)脳血管障害患者では随意性の低いvisually triggered saccadeでも出現しやすかった。3)PDとSCDとの差は不明であった。4)CVDでは前頭眼野などの神経活動が反映されている可能性が示唆された。今後、これらの神経
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