我々は、リゾ型スフィンゴ脂質(サイコシン、グルコシルスフィンゴシン、スフィンゴシン)が、少なくともin vitroでは、いずれも、細胞呼吸(ATP生成)に重要なミトコンドリアのシトクロ-ムCオキシダ-ゼ活性を阻害することを見いだした。その効果は強力で、シアンとも比肩可能な程であった。しかし、その作用はいずれも、精製酵素に対しては見られず、内膜構成リン脂質と再構築して始めて明らかになることより、酵素の膜環境を変化させることによったと考えられた。 一方、これらのリゾ型脂質の効果はいずれも、アルブミンにより抑制された。 これらについて、各リゾ型脂質の間に大きな差は見いだされず、アルブミンはこれらのいずれに対しても強力な結合能力を発揮し得るものと思われた。また、少なくともサイコシンについては、pH、温度の変化によっても大きな影響はうけなかった。 これらから、スフィンゴリピド-シスにおいて、アルブミンが対症的とはいえ治療に応用され得る可能性が考えられた。 一方、生体内で生成され得るアンモニアが、脳のエネルギ-代謝産物(ATP、クレアチンリン酸等)レベルを変化させること、生体内に存在するかもしれないアクリルアミドがクレアチンキナ-ゼ(CK)活性をin vitroおよびin vivoで阻害することを見いだした。CKは生体内でATPレベル保持に重要と考えられている。すなわち、これらは内因性神経「毒」(あるいはその可能性のある物質)がいずれもエネルギ-代謝に重大な影響をおよぼし得ることを示しており、これらについて、今後更に追究する価値があるものと思われた。
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