研究概要 |
ブタ大動脈から採取した内皮細胞を継代培養して,以下1〜3に示す実験に用いた. 1.流れによるせん断応力の負荷によって細胞形状及び骨格構造が変化することは昨年度の研究によって明らかにしたが,本年度は細胞骨格の変化の過程を蛍光測光顕微鏡を用いてさらに詳細に解析し,次のことを明らかにした.コントロ-ル状態で細胞周囲にあった細いマイクロフィラメントはせん断応力負荷によって時間経過とともに線維が太くなる.続いて細胞中央部に細い線維が現れ流れに沿って配向する.その後この配向した線維が太くなるという経過をたどっていた. 2.細胞培養の基質として細胞外マトリックスであるヘパラン硫酸,コンドロイチン硫酸,コラ-ゲン線維を混在させて,内皮細胞を培養すると著しく細長い形態をもつようになることが明らかとなった.しかしながら,これら個々の成分ではこのような効果は得られず,成分を混合した条件でのみ見られた.これらの細胞にせん断応力を加かても,形態変化の時間経過はガラス上で培養した場合よりも遅かった. 3.せん断応力負荷下における培養内皮細胞の物質透過性の検討については,細胞に均一なせん断応力を負荷する方法と,培養液の漏れをなくして透過性のみを計測するための方法に改良が必要であることがわかった.今後この改良を続けていく予定である.静置培養下での透過性については基本的な測定を終えた. 4.上記1〜3と異なり生体内での内皮細胞内の細胞骨格構造と流れの関係を調べるための,ウサギの大動脈を用いてアクチンフィラメントの形態学的観察を行った.その結果,血行動態と細胞骨格の発達の間には密接な関係があることが明らかとなった.
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