研究概要 |
先に提出した実験プロトコ-ル,すなわち予めコクサッキ-B3ウイルスに感染させたヌ-ドマウス(BALB/C)に,コクサッキ-B3および別のcardio-tropic virusであるencephalomyocarditisウイルスに感作されたT細胞を,時期を異なる時点(ヌ-ドマウスにコクサッキ-B3ウイルスを感染させてから10日目および30日目)に移住し,その後の心筋炎の進展を観察した。その結果,両実験とも,感作されたウイルスが異なる(encephalomyocarditisウイルス)と心筋炎は進展せず,心筋炎の進展あるいは慢性化には,同一のウイルスで感作されたT細胞が必要であることが判明した。すなわち,コクサッキ-B3ウイルス感染ヌ-ドマウスの心筋炎の程度(細胞浸潤,心筋壊死)に比し,encephalomyocarditisウイルスに感作されたT細胞を移注されたヌ-ドマウスでは心筋炎の程度は増悪せず,コクサッキ-B3ウイルスに感作されたT細胞を移注されたヌ-ドマウスでは心筋炎の程度は増悪した。また免疫染色を用いた検索より,exogenousに移注されたT細胞は,Thy1・2^+,Lyt 1^+,Lyt 2^+でなり,いわゆる未分化な若幼型であることが判明した。すなわち,心筋炎の慢性化のメカニズムとして,未分化ではあるが抗原特異性を有するT細胞が自己の心筋を破壊していくことが判明したことになる。おそらく初回感染時に破壊された心筋が抗原性を有している(自己抗原)と考えられよう。なお,心筋障害の検出を抗ミオシン抗体で行う予定であったが,以上の実験結果が明瞭であるため,同法を用いた実験は不要であると考えている。どのような機序で抗原特異的T細胞が個体に生じるかは今後の検討にまたねばならない。
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