研究概要 |
Wistarラット胸部大動脈中膜よりexplant法にて培養血管平滑筋細胞(SMC)を調整し、静止期(Go)のSMCに1%FCSにて増殖刺激を加えた際、adenylate cyclase activator(forskolin),phosphodiesterase inhibitor(cilostazol)およびPGE_1誘導体がSMC内cAMP濃度上昇を介してDNA合成抑制作用を示すことを ^3Hーthymidineの取り込み量を指標として明らかにし、cAMP濃度はcilostazolが持続性、PGE_1が速効性の増加作用(1hr;cilostazol 1.57倍 vs PGE_1 10倍、24hr cilostazol 1.44倍 vs PGE_1 1倍)を示していた。cAMP濃度の時間的変化と増殖抑制効果の検討より以下の知見が得られた。1.10^<ー5>MでのcilostazolおよびPGE_1はcompetent factorであるPDGF刺激でのDNA合成抑制効果は同程度であった(抑制率cilostazol ー23.1% vs PGE_1 ー35.2%)。 insulin刺激での抑制効果はcilostazolが強力であった(cilostazol ー73.6% vs PGE_1 ー22.0%)。2.細胞数、細胞蛋白量を指標として2日ごとに10%FCSによる培地交換を行なった際、10^<ー5>Mのcilostazolは有意に細胞数・細胞蛋白量増加作用の抑制効果を示したがPGF_1の抑制効果は認めなかった。3.Northern blotting法にてPDGF,insulinはcompetent geneであるcーmyc protoーoncogeneのmRNAを増加させた。cilostazol,PGE_1は同程度増加したcーmyc protoーoncogeneの発現を抑制した。以上の事よりcompetent作用の抑制には細胞周期初期のcAMP濃度上昇が関与するがその濃度上昇は1.5倍程度の上昇で十分であり、その後のprogression作用の抑制には持続するcAMP濃度の上昇が必要であることが推定された。
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