研究概要 |
再潅流時における微小循環障害の病態因子を明らかにする目的で,犬心筋組織より単離した微小血管内皮細胞と好中球の混合培養下での低酸素ー再酸素化モデルを用い,活性酸素ラジカル,リボキシゲナ-ゼ代謝と好中球粘着能について検討した.内皮細胞を低酸素(PO_2=1mmHg,45分)ー再酸素化(PO_2=100mmHg,60分)し,活性酸素ラジカルを5,5ーdimethyー1ーpyrrolineーnーoxide(DMPO)によるスピントラップ法およびミノ-ル依存性化学発光法にて測定すると,再酸素化1時間および4時間後をピ-クとする2相性の産生亢進が認められた.前者はキサンチンオキシダ-ゼ阻害剤allopurinol,後者はリボキシゲナ-ゼ阻害剤nordihydroguaiaretic acid(NDGA)により著明に抑制された.好中球を正常酸素条件の内皮細胞と混合培養するとその粘着率は2.1%であるのに対し,再酸素化1時間後の内皮細胞には最大値41.5%の好中球が粘着した.かかる条件下にて活性酸素ラジカルをスピントラップ法を用いて測定すると,正常酸素条件では認められないのに対し,再酸素化1時間には酸素ラジカルによるDMPOアダクト(DMPOーOOH,DMPOーOH)が認められた.この際アラキドン酸リポキシゲナ-ゼ代謝物質(ヒドロキシ酸,HETE)産生が著明に亢進し,好中球粘着および酸素ラジカル産生と密接な相関を示した.NDGAにより内皮細胞のHETEを抑制すると好中球粘着並びに酸素ラジカル産生も減少し,逆にシクロオキシゲナ-ゼ阻害剤インドメサシンにより増強された.今回の結果は微小血管内皮におけるリボキシゲナ-ゼ系,シクロオキシナ-ゼ系が好中球の粘着,酸素ラジカル産生に各々抑制,促進的に働き,再潅流時の微小循環障害の発現にアラキドン酸代謝が重要である可能性が示唆された。
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