研究概要 |
虚血に対する脳組織の易損傷性には部位により差があることが知られ、この現象(選択的脆弱性)の発生メカニズム解明のためには、虚血負荷の一定化、虚血早期における微小領域の脳血流変化の計測や脳組織各代謝コンパ-トメントの生化学的、組織化学的計測が必須である。研究者らは平成元年度の研究を通じて、免疫組織化学的方法により、虚血超早期に脳梗塞易発症砂ネズミの海馬などの選択的脆弱性を示す領域に明らかな病変を検出し得ることを示す(Neuroscience 31:401ー411,1989)とともに、シナプス終末部が虚血に対して比較的抵抗性であることを明らかとした(J Cereb Blood Flow Metabol 9:S4,1989)。平成2年度には、短時間虚血時に存在すると考えられる微小循環レベルでの不均等な血流変化による活性酸素の生成を、活性酸素生成抑制剤を投与することにより抑制し、本操作が遅発性神経細胞壊死の発生阻害効果を示すことより、本病態におけるフリ-ラジカルの関与を初めて明らかとする(Neuroscience 35:551ー558,1990)とともに、脳梗塞易発症砂ネズミの片側脳半球虚血時の微小循環と微小領域の細胞障害状態について、研究者らの開発、確立した免疫組織化学的方法とオ-トラジオグラフィ-法による局所脳血流量測定法の同時施行法を応用することにより検討し、虚血早期の脳虚血病変の発生に関しても局所の微小循環変動がきわめて重要な意義を持つことを明らかとした(Stroke 21:1470ー1477,1990)。さらに、脳梗塞易発症砂ネズミを用いた30分虚血・再潅流モデルが再現性良好な脳浮腫モデルであることを示すとともに、免疫組織化学的方法と色素濡出法の組合せにより血液・脳関門の障害にも脳局所で脆弱性に差があり、この差にも微小循環変動が関わる可能性を示唆する結果を得ている(Acta Neuropathol,in press,1991)。以上、本研究を通じて、選択的脆弱性決定要因としての微小循環変動の重要性を明かとし得た。
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