研究概要 |
目的,方法:肺高血圧に伴う右室肥大心の蛋白代謝に対するCa拮抗剤(Nilvadipine)とACE阻(DeraprilーHCI)の効果を6週令SDラットにモノクロタリン(60mg/kg)を皮下注し,1W後からNilvadipine(3mg/kg/day),DeraprilーHCI(30mg/kg/day)を2週間投与した。心臓を摘出後,ミオシンアイソエンザイム,コラ-ゲン量,コラ-ゲンタイプの変化を検討した。また右室圧も3週目に測定した。結果:(1)上記用量の両薬剤は右室収縮期圧を同程度に低下させた。(2)両薬剤共に右室肥大を有意に抑制した。その抑制効果はACE阻害剤がCa拮抗剤よりもより強かった。(3)ミオシンアイソエンザイムは圧負荷に伴いV1からV3にシフトするが,両薬剤はこの変化を同程度に抑制した。(4)Ca拮抗剤は右心室コラ-ゲン濃度を有意に減少させたが,ACE阻害剤は抑制しなかった。圧負荷に伴い右室コラ-ゲンタイプはIII,V型コラ-ゲンが増加した。Ca拮抗剤はこの変化を抑制したが,ACE阻害剤はコラ-ゲンタイプの変化も抑制しなかった。結語:両薬剤共に肺高血圧は同程度に低下させたにもかかわらず心筋蛋白代謝に対する効度は異なることが判明した。即ち,ACE阻害剤は心肥大抑制効果は大であるにもかかわらず,コラ-ゲン代謝は抑制しないことが判明した。しかしこれはACE阻害剤は収縮蛋白,半収縮蛋白を均等に抑制し,一方,Ca拮抗剤は収縮蛋より非収縮蛋白をより抑制し,心筋組成を変化させている事を意味し,両薬剤の功罪は更に心機能を検討し判断する必要がある。
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