研究概要 |
目的,方法:心臓は負荷に対して収縮蛋白,及び間質結合組織の主成分であるコラ-ゲンを量的,質的に変化させ心肥大を形成する.また,心肥大進展過程におけるβーリセプタ-の動態も心機能を考える上で大切である.本研究では圧負荷右質肥大モデルを用い心肥大進展過程におけるこれらの変化を同時に検討すると共に,薬剤による心肥大抑制効果の有無,及びその功罪を詳細に検討した.結果:右質肥大進展に伴い右室のみならず左室のミオシンアイソエンザイム(MIE)がV1からV3に変化した.右室コラ-ゲンも量的,質的に変化した.即ち,右室肥大の進展に伴い右室のコラ-ゲン濃度は不変であったがコラ-ゲン総量は増加し,またIII,V型コラ-ゲンが増加した.βリセプタ-は肥大形成に伴い,右室のみならず左室でもdown regulationされた.心不全を伴う右室肥大期にはこれらの変化は更に著明となった.これらの結果より圧負荷に伴い心臓は蛋白代謝を変化させ適応するが,これらの変化が過剰に生じると,また心機能と密接に関係するβリセプタ-がdown regulateされるに伴い心不全を呈することが明きらかとなった.更に,ACE阻害剤とCa拮抗剤の心肥大抑制効果,及びその功罪を比較検討した結果,両薬剤は右室圧は同程度に低下させ,共に右室肥大を抑制したが,その抑制効果はACE阻害剤が大であった.収縮蛋白MIEは両薬剤により同程度V1からV3への変化が抑制された.一方,Ca拮抗剤は収縮蛋白代謝を抑制する以上にコラ-ゲン代謝を抑制したが,ACE阻害剤はコラ-ゲン量をバランス良く抑制し,コラ-ゲンタイプの変化は抑制しなかった.結語:単なる心肥大抑制効果のみならず,薬剤による収縮,非収縮蛋白等心臓構成蛋白に対する効果,及びその心機能に対する効果も含めて検討する必要があることが推察された.
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