虚血心のストレス下におけるエネルギ-効率:慢性覚醒犬を用いての検討

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01570493
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 砂川 賢二 九州大学, 医学部, 助手 (50163043)
• キーワード: Optimal heart / Optimal Afterload / end-systolic pressure-volume relation / Ventriculo-arterial coupling

研究概要

背景:近年主要な循環器疾患の病態が明らかになるにつれ、各種の新たな診断法や治療法が開発されてきた。しかしあらゆる循環器疾患の最終像が心不全であることに変わりはなく、未だに重症心不全に対する有効な手だてはない。本来循環器システムはストレスに耐えられるように幾多の適応機構を有しており、心不全はこの適応機構の破綻状態と考えることができる。そこで本研究ではエネルギ-効率の立場から、心臓のストレス(生理的および病的)に対する適応原理を探るとともに心室と血管の至的負荷について検討する。
方法および結果:トレッドミルを走るよう訓練された成犬を麻酔開胸し大動脈に電磁流量計、左室に血圧計を挿入する。手術から充分に回復した後トレッドミル上を走らせ心機能、心拍出量、血圧を測定する。最小の心酸素消費で必要な心仕事を行う心臓を至適心臓とし、心臓から最大の外部仕事を取り出す負荷条件を至的負荷とする。健常犬では安静時も運動中も心臓は至的心臓であり、負荷も至的負荷であった。一方、急性の心筋虚血による不全心では至的負荷はほぼ保たれていたが、至的心臓は維持されていなかった。
考案:健常犬では安静あるいは運動にかかわらず最小の心酸素消費で末梢の要求に応えられるように心収縮性が設定されていた。さらに後負荷は最大の心仕事が取り出せるように設定されていた。不全心では心機能の低下のため心臓は必要以上の酸素を消費していることが示唆された。
結語:本研究で定義した至的心臓や至的負荷が真に循環系の調節目標になっているかどうか明らかでない。しかしながら、これらを至的に保つことはエネルギ-的に有利であり、生物学的に極めて重要である。今後これらを至的化する治療が予後に与える影響を検討する必要がある。

研究成果

• [文献書誌] Anan T et al.: "Arrhythmia analysis by successive RR plotting" J Electrocardiol.
• [文献書誌] Sugimachi M,et al.: "A new method to identify dynamic transduction properties of the aortic baroreceptors" Am J Physiol.
• [文献書誌] Fukamachi K et al.: "Effects of left heart bypass on right ventricular performance" J Thoracic Cardiovasc Surg.
• [文献書誌] Hayashida K,et al.: "Mechanical matching of the left ventricle with the arterial system in exercising dogs" Circ Res.
• [文献書誌] Sugimachi et al.: "Optimal afterload for the heart vs.optimal heart for the afterload" Frontiers Med Biol Eng.
• [文献書誌] Morita et al.: "Effects of thromboexclusion on arterial input impedance" J Thoracic Cardioasc Surg.
• [文献書誌] Sunagawa et al.: "Ventriculo-arterial matching in exercising dogs.In Analysis and simulation of the cardiac ischemia edited by Sideman et al." CRC press, 471 (1989)
• [文献書誌] Sunagawa et al.: "Ventricular matching with the arterial system in chronically instrumented dogs In Cardiac mechanics and function in the normal and diseased heart edited by Hori et al." Springer-Verlag, 353 (1989)