研究概要 |
心筋が虚血状態に陥いった後、心筋を再灌流すると重症不整脈が発生することが知られている。この再灌流に伴って発生する不整脈の成因を明らかにすることが今年度(平成元年度)の研究課題である。ラット心をランゲンドルフ法にて灌流し、左冠動脈を狭窄した後に狭窄を解除し再灌流した。その結果、狭窄時間が10分間の時が再灌流性不整脈の出現頻度が大であった。再灌流不整脈の出現は再灌流3分以内が90%であり、3分以降に発生する頻度は少なかった。この再灌流不整脈の発生に種々の細胞内イオンがどのように関与しているか検討するために灌流中の各時点で心筋中のナトリウムイオン(Na^+)、カルシウムイオン(Ca^<2+>)を炎光法および原子吸光法により測定した。その結果、虚血中にはNaが上昇するがCa^<2+>は虚血前と変化を認めなかった。しかし、再灌流により心筋内のNa^+は虚血時と差はなかったが、Ca^<2+>が再灌流に従い急激に上昇することを認めた。又、実験の各時点において心筋を液体窒素下に固定し、心筋細胞膜の過酸化度および膜Na^+,K^+-ATPase活性を測定した。虚血中には膜過酸化は非虚血に比し進行していなかったが、重症不整脈の出現した再灌流心の膜過酸化はより増大を示した。Na,K ATPase活性は膜過酸化と同様に再灌流心において低下を示した。このように、心筋虚血後に起きる再灌流不整脈の発生には、Ca^<2+>が直接もしくは間接的に関与していると推測された。更に、膜過酸化障害も認められたことから、再灌流直後に発生する活性酸素もこの不整脈の出現に何んらか絡んでいると思われた。特に、活性酸素の消去剤が不整脈の発生に対して抑制することからも、不整脈の発生に対して活性酸素が深く関わっているものと考えられる。
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