研究概要 |
再潅流心筋障害には再潅流直后から増加するカルシウムが重要であることを平成元年度に報告した。平成2年度では、再潅流中に外的にフリ-ラジカル消去剤を投与すると不整脈の出現頻度は変化なかったが、不整脈の持続時間の知縮効果を認めた。一方,心筋障害に対してこれらの投与の改善効果は認めなかった。平成3年度では、内因性のフリ-ラジカル消去剤の発現が心筋障害を防御できるか→否かを研究した。最近、腫瘍壊死因子(TNF)やインタ-ロイキン(IL)ー1αが癌細胞などでマンガンタイプのラジカルスカベンジャ-(MnーSOD)を発現することが報告されている。このため,ラットに上記のサイトカインを24時間前に投与するとMnーSODの蛋白量の増加を認めた。この時の心臓を摘出し再潅流モデルに応用すると、心筋収縮能は非投与に比し改善傾向を認めた。又、再潅流時に発生する不整脈は非投与と比べその出現頻度に差を認めなかったが、不整脈の持続時間は短縮した。このように、内因性のフリ-ラジカル消去剤の発現は、外的に投与した時と同様に不整脈の発生時間に対し有効であった。一方、再潅流后の心筋収縮障害に関しては、内因性の消去剤の発現により改善傾向を認めた。以上の研究結果から、再潅流中に生じる種々の代謝変化に対して、フリ-ラジカルが何らかの形で関与していると推察された。今后,分子生物学的手法を導入しラジカル消去剤の発現調節機構を検討することにより、再潅流心筋障害の成因を解明し、虚血性心臓病の対策と治療に新たな展開を期待できると思う。
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