研究概要 |
(1)高血圧自然発症ラット(SHR)ならびに対照ラット(WKY)の脳内アンジオテンシンIIの局在性の検討:生後16週齢のSHRおよびWKYをそれぞれペントバルビタ-ル麻酔下に断頭屠殺し,直ちに脳より視床,視床下部および中脳を摘出し,そのホモジネイトからアンジオテンシンII(AII)分画を抽出して後,ラジオイムノアッセイ法により測定した。その結果,AIIはSHRおよびWKYとも中脳が最も高く,次いで視床下部および視床の順であった。脳内AIIは,いずれの分画ともWKYがSHRに比し高値の傾向を示した(中脳,SHR=104pg/g tissue,WKY=144pg/g tissue;視床下部,SHR=83pg/g tissue,WKY=116pg/g tissue;視床,SHR=69pg/g tissue,WKY=96pg/g tissue)。次いで,生後10〜12週齢のSHRならびにWKYの脳から中脳を摘出し,これを2×2mm大の組織片としてKrebsーRinger液(37℃,95%O_2,5%CO_2存在下)中に1〜2時間組織培養し,培養液中のアンジオテンシンI(AI)ならびにAIIを測定したところ,AIはSHRおよびWKYとも培養液中に検出された(それぞれ5〜10pg)が,AIIはともに検出されなかった。この理由として,実験に供した動物の週齢が関与すると思われるので,今後はさらに幼若ラット(生後1〜2日)を用いて検討する必要がある。(2)脳内AIIの放出機序の検討:生後10〜12週齢のSHRの脳から(1)と同様に中脳を組織培養し,培養液中にカルシウムイオノフォア(A23187,10μM)を添加したところ,AII測定感度(1pg/tube)以下の低値から添加1時後に6〜8pgに上昇した。一方,培養液中にホルボ-ルエステル(TPA,0.5〜1μM)を添加してAIIの放出の有無を検討したところ,AIIの放出は認められなかった。今後,SHRおよびWKYとも幼若のものを用いて,AI,AII放出の程度とその機序について検討する必要があると考えられる。
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