研究概要 |
中枢神経系(特に視床下部、脳幹)は血圧の調節において重要な役割を演じている。我々は1988年にブタの脳から単離・精製された脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)脳室内投与の動脈圧に及ぼす影響を検討した。雄性Spregue-Dawleyラットを対象として第三脳室にカニュ-レを留置し、3日後にinactin(80mg/kg,IP)麻酔下で頚動脈にPE50を挿入し動脈圧と心拍数を記録した。1.BNP単独投与の動脈圧に及ぼす影響:生食あるいは5、10、20Mg/KgBNP(10Ml)を第三脳室に注入したところ、20Mg/KgBNPは投与3分後に7.1±1.2mmHgの有意の動脈圧の下降を示したが低濃度では有意の低下を示さなかった。2.(1)高張食塩水脳室内投与時の動脈圧の変化:1.0MNaCl(10Ml)を第三脳室に投与したところ動脈圧は上昇し、3分後に最大(20.5±3.0mmHg)の上昇を示したが、生食を注入した場合は有意の変化をきたさなかった。(2)脳室内BNP前投与による高張食塩水投与時の昇圧反応に及ぼす影響:5Mg/KgBNPまたは生食を第三脳室に投与し、10分後に生食また1.0MNaClを注入したところ、生食前投与群馬大学・工学部・では1.0M NaCl注入後最大15.8±2.0mmHgの動脈圧の上昇をみたが、BNP前投与群では動脈圧は有意の上昇を示さなかった。以上の結果から1.BNP単独脳室内投与は動脈圧の低下をもたらす、2.高張食塩水の脳室内投与は動脈圧の上昇をきたすがBNPの前投与により阻止されることが示唆された。上記実験ではBNPとしてブタBNPを用いたが、最近ラットBNPが入手可能となった。上記実験と同様にラット第三脳室内にカニュ-レを留置し、人工髄液またはラット BNPを0.1、0.5、1.0Mg/Kg/minで持続注入(0.1ml/nr、20分間)した後に1.0MNaCl(10Ml)を注入したところ、0.5、1.0Mg/Kg/min持続注入例で高張食塩水投与に伴う昇圧は有意に減弱した。今後はラットBNPを用いて、Dahlラット(遺伝的に食塩負荷により血圧が上昇するSラットを上昇しないRラットがある)での血圧調節における役割を検討する予定である。
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