研究概要 |
中枢神経系(特に視床下部、脳幹)は血圧調節において重要な役割を演じている。我々は1988年にブタの脳から単離・精製された脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の脳室内投与の動脈圧に及ぼす影響を検討した。 1989年にはラットBNPが単離・精製され本年度はラットBNPの脳室内投与の動脈圧に及ぼす影響を検討した。雄性SpragueーDawleyラットを対象として第三脳室にカニュ-レを留置し、3日後にinactin(80mg/kg,IP)麻酔下で頚動脈にPE50、頚静脈にシリコンチュ-ブを挿入し、動脈圧と心拍数を記録した。まずラットBNP静脈内投与の動脈圧に及ぼす影響を検討した。1.0〜10μg/kgのBNPを静脈内に投与したところ、用量依存性の血圧低下を認めた。同量のBNPを第三脳室に注入したところ血圧の低下を認めたが、静脈内投与時の低下と有意差を認めなかった。血圧低下は脳室内に注入した場合、2〜5分後に始まり、脳室から静脈内にリ-クしたBNPによる降圧である可能性が大きいと考えられた。0.1〜1.0μg/kgのBNPを第三脳室に注入したが血圧に有意の変化はみられず、BNPの中枢投与が動脈圧の低下をきたすとは考えにくい。また、0.1〜2.0μg/kgのBNP投与後に0.6MNaClを投与したところNaClによる血圧上昇の抑制はみられず、BNPの投与がNaClの中枢内投与による血圧上昇を抑えるとは結論できなかった。 次に2.0μg/kgのBNPを第三脳室に投与し、その後0.6MNaClを投与した場合の血中vasopressin、ACTH濃度の変化に及ぼす影響を検討したところNaClによるvasopressinの上昇は有意に抑制され、ACTHの上昇は抑制を受けなかった。 血圧に影響を与えない用量すなわち0.6μg/kgのBNPを第三脳室に注入しその後静脈内にフェニレフリンを投与して圧の上昇に伴う心拍数の低下を検討したが、有意の変化はみられなかった。
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