中枢神経系は血圧調節で重要な役割を演じている。心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の脳内投与はアンジオテシン(A)IIの脳内投与の血圧上昇を抑制すると報告され、脳での役割が注目されている。また1988年にブタ、89年はラットの脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、90年にはブタのCタイプ、ナトリウム利尿ペプチド(CNP)が単離・同定され、CNPは脳に特異的に存在すると報告されている。そこで脳でのBNPとCNPの血圧調節における役割を検討した。1.ラットを麻酔し、第三脳室にラットBNPまたはCNPを投与し血圧を記録し血中VPを測定した。血中VPの低下と高用量でのみ血圧の下降をみとめた。ラットANPも降圧作用を示さなかった。2.脳室にAIIあるいは高張食塩水を注入し、血圧と血中VPの上昇をみた。ラットBNPまたはCNPを脳室に同時に注入するとAIIや高張食塩水による反応は抑制された。ANPも同等の抑制効果を示した。3.高食塩飼育で血圧が上昇する食塩感受性Dahlラットの脳室にBNPを投与した。高用量BNPでのみ血圧下降をみた。またBNP中枢投与は圧受容体反射機能(フェニレフリン静脈内投与時の血圧上昇に対する心拍数減弱反応)に影響を与えなかった。以上の成績から脳のBNPとCNPの血圧とVP分泌に及ぼす効果はANPと同等で、脳内でAIIやナトリウムと拮抗することが示唆された。一方循環血中のAIIは交感神経活動(SNA)を刺激すると報告され、ANPはこの作用を抑制する可能性がある。そこでヒトでAII、ANPを投与し、血圧とSNAを測定して両者の関係を検討した。AIIは血圧の上昇とSNAの亢進をきたし、ANPはこれを抑制した。このAIIとANPの拮抗作用は中枢神経系を介している可能性も考えられ今後検討を続けていきたい。
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