研究概要 |
自然発症高血圧ラット(SHR)およびWKYラットの大動脈由来の培養血管平滑筋細胞(VSMC)を用いて,各種成長因子,血管作働物質を作用させた場合のcーmyc proto oncogene(cーmyc)の発現の程度を比較し,Ca拮抗薬やα_1ブロッカ-により抑制されるかどうかを検討した。SHR由来のVSMCは,胎児血清,PDGF,EGF,アンギオランシンII,エンドセリンー1,エンドリンー2,エンドセリンー3の制激に対してWKY由来のVSMCに比し有意に高いcーmycの発現を示した。しかし,TGFーβに対してはcーmycの発現の増強は示さなかった。一方,SHR由来のVSMCの種々の成長因子やアンギオテンシンII,エンドセリンなどの血管作働物質によるcーmycの増強された発現はCa拮抗薬である,ニフェジピン,ジルチアゼムによりWKY由来のVSMCのcーmycの発現の程度に抑制された。まだ,α_1ブロッカ-である塩酸ブナソシンによっても抑制されることを認めた。 cーmycの発現にはCa^<++>とプティンキナ-ゼCが関与すると考えられているが細胞内Ca^<++>の動員に重要とされているイノシト-ル1,4,5ー3リン酸(IP_3)のアンギオテンテンIIに対する反応性をSHR由来のVSMCとWKYのそれとを比較したが,SHR由来のVSMCのIP_3反応はWKYの4ー5倍の反応を示した。このことよりSHR由来VSMCのcーmyc発現の増強の要因の1つはアレギオテンシンIIに対するIP_3反応の増強とそれに続く細胞内Ca^<++>の上昇の増強が関与している可能性が考えられた。
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