研究課題/領域番号 |
01570503
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
片桐 敬 昭和大学, 医学部, 教授 (90102293)
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研究分担者 |
諏訪 好信 昭和大学, 医学部, 助手
迎 修司 昭和大学, 医学部, 助手
長谷川 茂夫 昭和大学, 医学部, 助手 (80211473)
下司 映一 昭和大学, 医学部, 助手 (50192050)
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キーワード | 急性心筋梗塞 / ポンプ失調 / 非虚血部心筋 / 小胞体 / ミトコンドリア / 電子顕微鏡 / 成犬心 / 冠結紮 |
研究概要 |
[目的]急性心筋梗塞に合併する重症ポンプ失調の機序の解明のため、冠結紮梗塞犬を用い、左室収縮期圧(LVSP)低下群と非低下群に分け、血行動態、心筋血流量(MBF)と非虚血部心筋小胞体(SR)とミトコンドリア(Mt)の活性との関連を検索した。[方法]雑種成犬25頭の回施枝結紮後LVSPが70%以下に低下した群(D群)と非低下群(ND群)に分けた。MBFは、水素ガスクリアランス法で、心拍出量(CO)は熱希釈法で測定した。120分後心を摘出し、非虚血部(NIZ)と虚血部(IZ)から遠心法によりSR、およびMtを抽出し、Ca-ATPase活性と電気泳動法によるSR構成蛋白の分画定量、および呼吸活性、電子伝達系の諸酵素活性を測定した。さらに心筋組織ATP測定と、電顕観察を行った。[結果]D群では、LVSPは結紮前の70%に、COも同様に低下し、ショック状態を呈した。NIZのMBFは60%に低下し、冠低灌流状態を示した。ND群ではLVSP、COともに結紮前値と変わらず、NIのCBFも同様に保たれた。IZのSRのCa-ATPase活性、Mtの呼吸活性および電子伝達系諸酵素は、両群で前値の35%前後に低下し、SRのATPase主蛋白の崩壊をみとめ、ATP含量の著明な低下、電顕所見とともに、虚血心筋壊死を示した。D群NIZのSRのCa-ATPase活性は、前値の40%に低下し、MtのState III、Complex-I、DNP-ATPase活性も同様に低下した。ATPは心内膜側で有意に低下した。しかし、SRのATPase主蛋白の崩壊もみられなかった。電顕像では壊死所見はみられなかった。ND群ではSR、Mtの諸活性、電顕所見ともに結紮前の正常心筋と差がなかった。[考案および結語]心筋梗塞に伴う重症心不全の発症に関しては、梗塞の広範囲に伴うとする報告が多い。本研究では、実験的心筋梗塞に心原性ショックを合併した心の非虚血部にもSR、Mtの活性低下がみられ、冠灌流低下に基因する代謝障害によって収縮不全をきたし、ポンプ失調の一因となっていることが示唆された。
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