研究概要 |
再灌流障害の起因物質として酸素由来のラジカルが注目されている。しかし、ラジカルは著しく寿命が短いために化学的に捕捉する事が極めて困難で、いまだ、in vivoで再灌流時にラジカルが発生することは証明されていない段階である。本研究の目的は心臓そのものからの再灌流時のラジカル発生を1)迅速凍結によりラジカルを捕捉するFreeze-trapping Electron Spin Resonance(ESR)測定法、と2)DMPOやPBNなどのspin trap剤を用いるESR測定法を駆使して直接証明することである。 結果:1)Freeze-trapping法:液体窒素で冷却したワ-レンバ-ガ-トングで再灌流直後に心臓をFreeze-clampしたが、この方法では酸素由来のラジカルは捉えられなかった。 2)Spin trapping法:DMPO(Dimethyl pyrroline introxide)を再灌流30秒前から再灌流3分後まで投与し灌流心のEffluentのESR測定を行なった。Effluentは直ちに-196℃に凍結し、DMPO-adductの減少とTrap剤自体の自動酸化を防いだ。またア-チファクトによるラジカルの信号の出現を予防するため実験室とESR測定室は遮光し実験を暗室で行なった。初期はDMPOによっても全くラジカルをとらえられなかったが、DMPOの調整時に全てのBufferをChelex100を通すことにした後は、ア-チファクトのDMPO-OHを除くことが出来、再灌流直後に15頭で1頭のみ再灌流10秒後のEffluentにス-パ-オキサイド(02〓)の発生を証明することが出来た。この実験においては米国の研究者であるCarmen M.Arroyo博士を9月に当研究室に召還し、技術的な問題を解決した。さらに3分30秒という短期間のDMPO投与によって心機能は非投与群より良好に保たれ、冠流出液の逸脱酵素(CPK,GOT,LDH)も低値を示した。このこともまたDMPOによるス-パ-オキサイドが再灌流障害に直結することを支持するものであった。
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