研究概要 |
心筋肥大過程において細胞内情報伝達系の一つであるプロデインキナ-ゼC(PKC)および癌遺伝子による調節機構が注目を浴びている。しかし、ヒトにおいて心筋肥大を生じる特発性心筋症におけるこれらの役割については全く不明である。そこで今回の研究では、特発性心筋症の心筋肥大過程をヒト生検試料を用い、これら調節因子の観点から免疫組織化学および分子生物学的手法を用い研究した。 1.特発性心筋症の心筋におけるプロテインキナ-ゼCの発現の研究 モノクロ-ナル抗プロテインキナ-ゼC抗体を用い特発性心筋症(肥大型心筋症および拡張型心筋症)の生検心筋について免疫組織化学的検討を行った。その結果、肥大型心筋症においては高頻度でプロテインキナ-ゼCが発現していること、また発現強度は拡張型心筋症に比較し強いことが判明した。一方、胸痛症候群などのコントロ-ル症例では全く発現が認められなかった。すなわち肥大型心筋症に認められる心筋肥大ではプロテインキナ-ゼCの役割が重要であることが判明した。この研究結果は、1989年11月、第62回アメリカ心臓会議学術集会(ニュ-オリンズ)において発表し、一応の評価を得ることが出来た。 2.特発生心筋症の心筋における癌遺伝子の発現の研究 特発生心筋症の生検心筋について癌遺伝子プロ-ブ(cーmyc,cーfos,cーHaーras)を使ったin situ hybridizationを行っているが、これまでのところ陽性所見を得られていない。固定条件、反応条件など種々の点を再検討し研究を継続する予定である。
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