研究概要 |
初年度はヒト羊水の不活性レニンが腎臓のレニン顆粒膜により活性化される知見を得た。本年度はヒトのレコンビナントプロレニンを基質としてレニン顆粒膜によりプロセシングが生ずるか否かの検討を行った。 〈方法〉 ヒトのプロレニン _cDNAをCOS細胞に発現させ放射標識された[ ^<35>S]ープロレニンを得た。[ ^<35>S]ープロレニンを基質としてショ糖密度勾配超遠心法にて得たイヌ・レニン顆粒成分とともに50μlの0.1M MES緩衝液、pH6(含0.1%ルブロ-ル)中で3時間インキュベ-ション(37℃)し,SDS存在下に電気泳動を行ない、分子量を算定し、その変化を調べた。 [ ^<35>S]ープロレニンのみを同一緩衝液中でインキュベ-トしたものおよびトリプシン処理したものをそれぞれコントロ-ルした。 〈結果〉 [ ^<35>S]ープロレニンのみのコントロ-ルの電気泳動では分子量約48,000(プロレニン)に単一バンドとして出現した。一方トリプシン処理したものでは分子量約48,000と約45,000(活性型レニン)の2本のバンドを得た。レニン顆粒膜又はその膜成分とインキュベ-トしたものでは分子量約48,000と約45,000の2本のバンドから得られた。 なお[ ^<35>S]ープロレニン顆粒膜とのインキュベ-ションに際し、酵素阻害薬の影響をも検討した。その結果、EDTA,セリンプロテア-ゼ阻害薬によってはプロレニンのプロセシングは抑制されず,Nーエチルマレイミド,Eー64,ロイペプチン存在下ではプロレニンのバンドのみ得られプロセシングは抑制された。 〈考察〉我々は従来の研究でレニン活性化がレニン顆粒により生ずる可能性を示唆する結果を得ている。今回はヒトレコンビナントプロレニンを用いて、レニンのプロセシングがレニン顆粒膜成分によりなされる結果を得た。その酵素としての性状はシステインプロテア-ゼであると考えられるが更に今後の検討を要する。
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