SSPE剖検脳(11歳男児)のホルマリン固定パラフィン包埋切片を材料として、麻疹ウイルス核酸の局在を検索した。 プロ-ブは麻疹ウイルスNP蛋白をコ-ドする領域のcDNA(東大医科研吉川泰弘博士により供与された)にビオチン化U-TPでラベルしたものを用いた。 発色はABC-APテット(アルカリフォスファタ-ゼ、ベクタ-ラボラトリ-社)を使用し、基室/発色源としてBCIP/NBTを用いて暗室内で30ないし40分間反応させた。 この結果核内封入体を有する感染細胞の核内、とくに封入体周囲に強いシグナルの発色を認めた。同様の発色は対照として用いた巨細胞性肺炎剖検肺組織にも認めた。しかしこのシグナルは核質内に遊離しているよりも核あるいは封入体周囲の膜構造に近接して存在しているように見られた。 DNase処理によってはこれらのシグナルの発色はほとんど影響を受けず、RNase処理によってバックグラウンドレベルまで褪色した。 以上の如く、ビオチン方によるin situ hybridizationによって、長期間保存されたSSPE脳組織中の麻疹ウイルスゲノムの局在を確定することが可能となった。 ビオチン法は特殊な施設を必要とせず、プロ-ブは安定であり、迅速に結果が出る点など特に臨床研究に有用であり、今後も更らに発展するものと思われる。
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