研究概要 |
前年度の本研究においてはSSPE剖検脳を材料として,ビオチン標識DNAプロ-ブを用いたin situ hybridization法により,麻疹ウイルス核酸の組織における局在を検索した。しかしながら本法に関してはその感度を有用性について,なお一定の評価が確立しておらず,広く一般に普及しているとは言い難いのが現状である。そこでさらに本法の有用性を具体的,客観的に実証するために,多分に主観的な組織レベルでのシグナル検出に比較して,より客観性のあるサザンブロツトハイブリダイゼ-ション法におけるビオチンプロ-ブの有用性を証明することを目的とした。 対象として,宿生細胞内においてはDNAのプロウイルスゲノムとして存在するため操作が客易ること,ウイルスの存在が直接的に疾病に対する病因的関与を示唆すること,及び後天性免疫不全症や自己免疫疾患との関わりで最近とくに注目されているレトロウイルスに属すること,などの理由から,ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLVー1)を選んだ。 また,これに併せて,近年急速に普及しつゝある超微量遺伝子検出法polymerase chain reaction (PCR)法の臨休研究への応用を試みた。すなわち,PCR法で微量遺伝子を増幅し,ビオチン標識プロ-ブを用いたサザンブロツトハイブリダイゼ-ションにより,その増幅産物の特異性を検定する方法により,1)HTLVー1母児感染においては経胎盤感染の可能性を具体的に示唆する実験結果,2)HTLVー1 associated myelopathy(HAM)においては中枢神経(髄液)内における本ウイルスの活発な感染状態を示唆する実験経果が得られた。 以上のごとく,ビオチンプロ-ブは,メンブランを媒体とした実験においても有用であることが証明され,今後の組織レベルでの検討においても十分活用し得るもと考えられた。
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