研究概要 |
成長ホルモン,性腺刺激ホルモン,テストステロン、170Hプロゲステロン,コルチゾルの24時間自然分泌リズムを検討した。また成長のリズムとして未熟児の体重増加速度についてもその特徴を知ることが出来た。その概要は以下のごとくである。 1.成長ホルモン,性腺刺激ホルモンの間欠的分泌は幼児期からすでに存在し、縮日(超日)リズムの周期は成長ホルモンで約3時間,性腺刺激ホルモンでは約2時間半であった. 2.下垂体性小人症では前葉ホルモン複合不全の例では成長ホルモン,性腺刺激ホルモン間欠的分泌が不明瞭になり,縮日性リズムの障害が推定された.これに対し成長ホルモン単独欠損症では,成長ホルモンの濃度が1ng/ml以下の低値を示す例にも明らかな間欠的分泌があり,縮日リズムの周期もほぼ3時間を維持していた. 3.ゴナドトロピンの概日性リズムは思春期の遥か以前から存在し,前思春期にいたり間欠的分泌の振幅増加によって昼夜の差が増幅されることを明らかにした。この概日性リズムは成長ホルモンのリズムとは必ずしも一致しないことをタ-ナ-症候群で確認した.他方,成長ホルモン分必障害があると,ゴナドトロピンの概日性リズムの出現が遅れるので,成長ホルモンとなんらかの関係があると考えられた. 4.テストステロンには幼児期から男女を問わず,昼間は低値で深夜に最大になる概日リズム存在する。この概日リズムをゴナドトロピンとくにLHと比較すると約8時間の位相の遅れがある。幼児期にテストステロンの概日リズムが認められなかった例は、思春期年齢になっても二次性徴が発現しなかった。テストステロンの概日リズムは、正常な性成熟を予知する指標になることを知った。 5.治療中の先天性副腎過形成で170Hプロゲステロンの日内リズムを見ると、思春期前にはコルチゾル(20mg/m^2、分2〜3)とフロリネフの併用だけで、170Hプロゲステロンは24時間を通じて低値のままに留まるが、思春期に入ると投与量を増やしても深夜から早朝の170Hプロゲステロン上昇を抑制することはできない。本症のコントロ-ルが思春期に悪化する原因はコルチゾルの不足ではなく、今後ゴナドトロピンとの関係を検討する必要がある。 6.未熟児・新生児の体重増加速度には約11日周期の長日リズムがあり、これは栄養摂取量、保育手技とは独立した固有のリズムと考えられた。
|