人パルボウィルスB19(HPV B19)による造血抑制機序の研究や特異抗体の検索にはHPV B19抗原が必要である。諸外国では無形成発作を生じた先天性溶血性貧血患者の血清から精製されているが、本邦では先天性溶血性貧血が少ないこともあり入手が困難である。本研究ではHPV B19の赤芽球系細胞における増殖様式を明らかにし、種々の研究に必要なHPV B19を確保することを目的にin vitroでHPV B19を増殖させる方法の開発を試みた。 (1)HPV B19による赤芽球への感染実験:エリスロポイエチンに反応性を有する7-monosomy骨髄増殖症候群の赤芽球過形成期の骨髄細胞を用いて、HPV B19のin vitroでの感染実験を施行した。エリスロポイエチンを添加しない培養条件ではHPV B19のreplicationはほとんど認められなかったが、エリスロポイエチン存在下では著明な増殖が認められた。また、感染後の赤芽球はgiant pronormoblast様でありin vitroにおけるHPV B19感染赤芽球に類似していた。 (2)HPV B19感染赤芽球の電顕的観察:エリスロポイエチンの存在下に培養した赤芽球および赤芽球コロニ-の電顕的観察を行い、in vivoにおけるHPV B19感染赤芽球と同様の所見が得られた。しかし、HPV B19粒子と考えられる所見は認められなかった。 (3)培養上清中のHPV B19定量:培養上清中に認められるHPV B19量は、感染に用いたHPV B19量により異なっていた。濃厚感染では培養上清中に認められるHPV B19量は減少する傾向が認められた。 今回の検討では培養条件により培養上清中に認められるHPV B19量は著明に異なることが明らかとなった。HPV B19の抗体検索などに必要とされる量のHPV B19を得るには最適な培養条件を明らかにする必要があると考えられる。
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