研究概要 |
今年度は初年度であり、まず細胞膜流動性の測定方法の標準化、次いでその測定方法を使用した予備実験の2つを行った。 1.細胞膜流動性測定方法の標準化 まず、現有の紫外螢光分光光度計に、試料の温度を一定に保ペルチエ式恒温装置と,励起光と放射光の光路に2枚の偏光板を装着した。この装置で、2枚の偏光板の向きを変えることにより、紫外偏光により励起された放射光(蛍光)の垂直成分と平行成分の測定が可能となった。ホモジェネ-トされた試料(細胞膜成分)自身は、蛍光を発しないが、膜と結合する蛍光分質(1,6-diphenyl-1,3.5-mexatrien(以下DPH)を加えることにより、上記の2方向の放射光を得ることができた。 2.予備実験 本研究の目的は、膜の構成脂質の一つであるドリコ-ルの量と膜の流動性との関係を見ることであるが、予備実験として膜の脂肪酸組成の変化と膜流動性との関係を見た。脂肪酸組成の変化は、C-6グリア細胞にペルオキシゾ-ムの脂肪酸β酸化阻害剤を作用させることによって引起こした。ポリトロンで破砕したグリア細胞ホモジェネ-トにDPHを加え、1時間インキュベ-トした。ホモジェネ-トの温度を3段階に切りかえながら、励起波長360nm,蛍光波長426nmで測定した。垂直方向の蛍光をI〓,平行方向の蛍光をI〓とすると、膜流動性の指標である蛍光異方性(Anisotropy)Pは,P=IN-I〓/I〓+2I〓で表わされる。予備実験では,膜の不飽和脂肪酸の増加に伴って膜流動性の増加が観察された。
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