ヒトインタ-リウキン(IL)遺伝子の導入を試みる前段階として、先天性免疫不全症のうち、B細胞欠損を伴うCVIDに焦点を定め、その病態生理を解明する目的と遺伝子導入に敵した細胞の選択のため、各種のサイトカン、ILを磁力線-ストロ-マ培養系に添加培養し、導入細胞の開発を目的とした。方法:ストロ-マ細胞(ST)の誘導は、われわれの開発した磁力線-ST法によった。正常対照群として、骨髄移植のドナ-、胎児骨髄を使用し、遺伝子導入対象として、免疫グロブリン補充療法中の4名の骨髄細胞を使用した。ST細胞源と、リンパ系幹細胞の分離は、パ-コ-ル比重遠心法によった。ST細胞の培養は、比重40%以上の細胞を線推芽細胞増殖因子(FGF)、IL-1、IL-5、IL-6の存在下で培養し、2週間の間隔で継代培養した。一方、リンパ系幹細胞の培養は、60%層をイムノビ-ズを使用して成熟リンパ球を除去した単核細胞に10%のST上清を添加培養し、6週以上培養した細胞をクロ-ニングし、リンパ系幹細胞源とした。結果(1)B細胞欠損型CVID(3/4)例はB細胞の育生を得意とするI型ストロ-マ細胞(長径100〜200um、短径20um)の欠損、または細胞育生能の欠落である可能性が極めて高い。I型ストロ-マ細胞はIL-6によく反応し、IL-6により反応性クロ-ンを誘導することができるがCVIDからは誘導することができなかった。(2)II型ST細胞(長径300〜500um、短径50〜100um)は主としてIL-5で誘導され、T細胞径幼若細胞の育生を得意とするがCVID(4/4)例で正常であった。以上よりB細胞欠損型のCVIDはIL-6反応性のI型ST細胞を補充することにより寛治が見込まれるため、IL-6を分泌していない胎児ST細胞にIL-6遺伝子を導入してfeeder layerを形成させ、CVIDのリンパ系幹細胞を培養することにより、明らかなB細胞の出現をみた。今後、CVIDの遺伝子導入療法の方法の治療指針となる可能性は極めて強いと考えられる。
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