研究概要 |
無(低)ガンマグロブリン血症を呈し、B細胞初期分化障害を有する先天性免疫不全症を対象として、免疫グロブリン重鎖(IgH)遺伝子の再構成障害について検討し、以下の結果を得た。 1).重症複合免疫不全症(SCID)8例、伴性無ガンマグロブリン血症(XLA)1例、Common variable immunodeficiency(CVID)8例よりEBウイルスを用いて形質転換B(前駆)細胞株を計139株作成した。この際、細胞株作成法にいくつかの改良を加えた。 2).蛍光抗体法による細胞表面形質の検討から、139株中14株がB前駆細胞株と考えられた。 3).作成したB(前駆)細胞株のIgH遺伝子再構成をサザン法により検討し、XLAおよびCVIDの一部でDJ〜VDJ再構成障害を、またT,B細胞がともに著減したSCIDの一例から由来したB前駆細胞株(SCID86730)でDJ再構成障害、すなわちレコンビナ-ゼ系酵素異常を示唆する知見を得た。 4).SCID86730株およびそのサブクロ-ンSCID221、213を対象として、1989年レコンビナ-ゼ酵素群そのものまたはレコンビナ-ゼを活性化するものとして報告された再構成活性化(RAGー1)遺伝子のメッセ-ジ発現を逆転写酵素ーPCR法で検討した結果、SCID86730株でRAGー1ーmRNAの存在が確認された。 5).レコンビナ-ゼ活性測定:12/23スペ-サ-と認識配列を含む、D領域断片とJ領域断片間にNeo遣伝子を挿入、gpt遣伝子を連結したレコンビナントベクタ-を作成した。当初、EBウイルス形質転換細胞への導入、発現効率が悪く、判定までに時間がかかったため、プロモ-タ-の変更や、活性測定にPCR法を用いるなど改良を加えた。
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