小児期から思春期にかけて、同年令群で血圧の高い者は年を経てもやはり血圧が高く、低い者は低い値をとることが知られている。これを血圧のトラッキング現象という。このトラッキング現象は血清コレステロ-ル値にも認められることを我々はすでに明らかにし、これら血圧高値持続学童及び血清コレステロ-ル高値持続学童は、将来の成人病のハイリスクグル-プになる可能性を示唆してきた。そこで高血圧早期の病態解明の一環として、これらの学童の安静時と運動時の心機能が対照群に比べ違いがないか比較検討した。 (1)6才から15才の期間、血圧が常に全学年の高値20%以内にあったものを血圧高値群とした(男10名女22名)。血圧高値持続群は、対照群に比べ体重が重く皮下脂脂が厚かった。左室内径、心筋重量、収縮能は差がなくとも、左室等容拡張時間の延長と左室内径最大拡張速度の低下を認めた。3名にエルゴメ-タ-運動負荷を行ったところ、血圧・心拍数の上昇を早期から認め、左室拡張機能の低下はより明らかになった。 (2)同様に血清コレステロ-ル高値持続群(男11名女11名)を検討した。対照群に比べ動脈硬化指数が有意に高く、特に男女では血圧・心拍数も高く左室心筋重量も高い結果となった。左室内径及び収縮機能には差がなかったが、左室等容拡張時間の延長・左室内径最大拡張速度の低下及び左房駆出血流・左室急速流入面積比の高値を認め、左心室の拡張機能低下が示唆された。このうち4名にエルゴメ-タ-による負荷、2名にハンドグリップ法による負荷を加えたところ、対照群に比べ左室内径短縮率の上昇率がやや低く、左室拡張機能の低下により顕著となる傾向を認めた。この結果よりハイリスクグル-プには、自律神経調節系の反応の違い、または左室拡張機能の低下が、運動時には心拍出量の増加のため顕在化し、心拍数上昇により補っていることなどが考えられる。
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